除去食(Elimination Diet)

一度リセットして腸を休めてみませんか




除去食(Elimination Diet)とは

数週間だけ反応が疑われる食品を一時的に外し、症状が落ち着いたら1品ずつ再導入して、どの食品が不調(腹部症状・頭痛・皮膚・関節痛・疲労・気分の不調など)を引き起こすかを見極める短期の食事療法です。
目標は、腸を整え、再び幅広いホールフードを安心して食べられる状態に戻すこと。
※日本向け表記:1皿=1人前の目安/1カップ=200ml/手のひら=約100g(主菜の目安)


除去食の特徴

  • トリガー同定:遅れて出る食物反応(数時間?数日後)も、除去→再導入で可視化。

  • 炎症をしずめる:反応食品とアルコールを外し、抗炎症・栄養密度の高い食品へ置き換え。腸粘膜の入れ替わり(約数日)を後押し。

  • 腸内フローラを整える:色とりどりの野菜・果物、たんぱく質、発酵食品(非乳)、**プレバイオティクス(食物繊維)**を重視。

  • 乳・グルテンは除外:よく反応源となるため、乳製品全般と**グルテン含有穀物(小麦・大麦・ライ麦等)**を除去。

  • 添加糖・加工品を最小限に:清涼飲料・加糖製品・人工甘味料は避ける。

  • 短期集中で栄養は十分に:減量が目的ではありません。必要な栄養素は他食品で補完しつつ行います。

  • 対象:通常治療で改善しにくく、食の関与が疑われる消化症状・頭痛/片頭痛・皮膚/関節・疲労・気分の波、EoE、IC 等。

  • 安全上の注意重い食物アレルギー(アナフィラキシー既往)がある方は医療者の監督下でのみ。妊娠/授乳中・小児・低栄養・摂食障害の既往がある方は適否を必ず相談


各食品カテゴリー

1皿(人前)の数え方
非でんぷん野菜=小鉢1皿 約70?80g(≈1/2カップ)/生の葉物=両手山盛り1杯(≈1カップ)/果物=小さめ1個 100?150g/炊いた穀類=約100g(≈1/2カップ)/主菜たんぱく質=手のひら1枚≈100g

食べてよい例

  • たんぱく質:鶏、七面鳥、ラム、野生肉、低水銀の魚(サーモン・ニシン・イワシ等)

  • 豆類:レンズ豆・ひよこ豆・各種ビーンズ(※大豆・ピーナッツは除外

  • 乳代替無糖のアーモンド/ココナッツ/オーツ(GF認証)/フラックス等、“非乳”ケフィア・ヨーグルト(無糖)

  • ナッツ/種子:アーモンド、クルミ、カボチャの種、亜麻仁(挽いて使用)等(ピーナッツは除外

  • 脂質・オイル:EVOO、アボカド油、ゴマ油、アーモンド油、亜麻仁油(非加熱)、ヘンプ油、クルミ油

  • 野菜非でんぷん野菜を中心に合計9皿/日目標(野菜多め)。アブラナ科(ブロッコリー/ケール/キャベツ/小松菜等)推奨

  • 果物:リンゴ、ベリー、キウイ、ザクロ、柑橘(体質により一時除外の場合あり)

  • 穀物(グルテンフリー):玄米、キヌア、そば(十割)、アマランサス、キビ、タピオカ、ソルガム、テフ、GF認証オーツ

  • 飲み物:浄水、減塩ブロス、カフェインレスのハーブティー、無糖のコールドプレス野菜ジュース

除去する例

  • 乳製品(牛・ヤギ・羊・ラクダ乳含む)、グルテン穀物(小麦/大麦/ライ麦/スペルト等)

  • 牛肉・豚肉大豆ピーナッツトウモロコシ甲殻類加工肉

  • アルコールカフェイン飲料(コーヒー、紅茶/緑茶 など)

  • チョコレート/可可精製糖(白砂糖/果糖ブドウ糖液糖 等)、人工甘味料

  • 既製調味料(砂糖・添加物・小麦/大豆を含みがち:ケチャップ/BBQ/照り焼き/甘酢等)

脂質の使い分け

低温=EVOO/中?高温=ごま・グレープシード・ひまわり・ココナッツ油/亜麻仁・くるみ油は非加熱トランス脂肪は回避
 

食材リスト

避けるべき食材 食べるべき食材
アルコール 乳代替(無糖)
牛肉
チョコレート 果物(フードプランに記載のもの)
コーヒー、清涼飲料、エナジードリンク、茶(紅茶・緑茶・烏龍茶・白茶) ジビエ(野生肉)
トウモロコシ グルテンフリー全粒穀物(アマランサス、そば、キビ、オーツ*、キヌア、米、テフ など)
乳製品 良質な油(EVOO など)
ハーブティー(カフェインレス)
グルテン含有穀物(大麦・ライ麦・小麦 すべて) 豆類(大豆・ピーナッツを除く
ピーナッツ ナッツ(ピーナッツ除く
豚肉 家禽(鶏、七面鳥 など)
加工肉 種子類
甲殻類 野菜
大豆・大豆製品  
精製糖(上白糖、高果糖コーンシロップ、三温糖、ショ糖 など)  

* オーツを食べる場合は「グルテンフリー認証」製品を選びます。セリアック病などの方は、GFオーツでも合わない場合があるため、担当医の指示に従ってください。


② たんぱく質の選び方(除去期)

取り入れる(例) 除外(例) メモ
家禽(鶏、七面鳥)、バイソン、ラム、ジビエ(鹿・エルク 等) 牛肉・豚肉 通常は赤身肉を除外。飼料・脂肪に蓄積する物質への配慮。
低水銀の魚(サーモン、ニシン、イワシ 等) 甲殻類 魚はオメガ3源。甲殻類は除去期は外す。
植物性たんぱく:レンズ豆・ひよこ豆・えんどう豆、ヘンプ/ピー/ライスの無添加プロテイン 大豆・大豆製品、ピーナッツ、卵 大豆・ピーナッツ・卵は除去期は外す。プロテイン粉は無糖・無添加を選択。

補足:たんぱく質は毎食しっかり確保(主菜の目安=手のひら1枚 ≈ 約100g)。解毒にも必須のアミノ酸供給源です。

 
 

再導入プロセス(除去後)

開始条件:主要症状が落ち着いてから。1食品ずつ/3日ごとにテストし、合併症状を72時間観察
平均的な再導入量(日本向け換算の目安)

  • 乳:牛乳200ml、チーズ約30g(無添加)

  • 卵:ゆで卵2個(卵黄のみ→全卵の順も可)

  • 小麦(グルテン):全粒小麦ゆで麺茶碗1杯弱(約120g)/全粒ホットシリアル約100g

  • 大麦/ライ麦:ゆで穀約100g/ライクラッカー2?3枚

  • トウモロコシ:粒約100gまたは小さめ1本

  • 大豆:枝豆約100g、豆乳200ml、豆腐約100g

  • 豚/牛・甲殻類:手のひら1?2枚(約100?200g)

  • ピーナッツ:約30g/ピーナッツバター大さじ2
    反応が出たら:その食品は3?6か月再除去してから再挑戦。


よくある質問(FAQ)

  • 期間は?
    除去3週間以上が目安(体質により延長)。開始直後は離脱症状(頭痛・倦怠感等)が出ることがあります。

  • 外食は?
    ?原則自炊が安全。必要時は原材料と調味料を確認。

  • 豆でガスが出るのですが
    少量から徐々に増量。浸水→ゆでこぼし、圧力調理、缶は洗って使用。

  • 甘味は?
    極力なし。使う場合は小さじ1?3/日合計の範囲で、メープル/蜂蜜/玄米シロップ/羅漢果/ステビア等(純品・無添加)。

  • 栄養不足が心配
    短期で実施し、置き換え食材で補完(例:カルシウムはブロッコリー/ヒヨコ豆/ケール/小魚など)。

  • 乳は全部だめ?
    除去期は動物乳は不使用。再導入でA2ミルクや硬質チーズを試す場合は担当者と相談

  • 誰でもできる?
    妊娠/授乳中・小児・低栄養・摂食障害既往・重度アレルギーの方は医療者へ相談のうえ適否判断


実践のためのリソース

  • 除去食フードリスト(食べる/避ける食品、写真つき)

  • 週間プラン&レシピ(日本向け量表記:g・ml・「皿/人前」)

  • 食事・栄養・ライフスタイル記録(7日間)

  • 再導入・症状トラッカー(72時間チェックシート)

  • 隠れた原材料リスト(小麦・乳・大豆・糖類の別名)

  • “色で食べる”チェック表(フィトニュートリエントの6色)

進め方に迷ったら、機能性医学プラクティショナーへご相談ください。除去は「終わらせるためにやる」短期プロトコル。最終ゴールは“食べられる幅を安全に広げる”ことです。