リンパ浮腫の手術 リンパ管細静脈吻合術とは

 

リンパ浮腫の外科的な治療のひとつに、「リンパ管細静脈吻合術(LVA: lymphaticovenular anastomosis」という手術があります。

 

この手術はリンパ管が詰まっている手前の部分に迂回路(バイパス)を作成し、リンパ液を静脈に流すことでリンパ液の流れを再建し、浮腫を改善させる方法です。顕微鏡をみながら髪の毛よりも細い糸でリンパ管と静脈を吻合する技術が必要とされます。

 

迂回路をつくると、腕や足に行き場のなくなり滞り溜まっていたリンパ液がスムーズに流れだします。

そして体中をめぐるリンパ液は、心臓に近い「静脈角」という部分で合流し、静脈に入り、大循環へ乗りめぐっていきます。

リンパ浮腫を完治させることはできませんが、リンパ液の流れを改善させることができます。

どの程度まで改善させられるかは個人差がありますが、概ねほとんどの方で程度に差はありますが実感して頂けることがあります。

 

  1. 手術後も無理なく圧迫療法を続けらるようになる。
  2. 毎日24時間つけなければいけなかったタイツも、夕方にむくみだしてから履くだけですむように楽になった。
  3. 毎日の履く作業が減った。
  4. 毎日ギュッときつい圧迫のタイツを履いていた方も、少し弱めのものに下げて履くことができるようになった。
  5. 時々あった痛みが改善した。
  6. 繰り返していた蜂窩織炎を起こさなくなった。

 

 

手術をしたからといって、大事な圧迫療法はやめられません。

特にリンパ浮腫の患者さんは、夏場はこの圧迫療法の弾性着衣がとても暑く湿気もたまり、清潔に保つのも難しく離脱してしまう季節とも言えます。外来で本当に苦労され、ストレスと身体的な負担が毎日積み重なっていきます。

 

リンパ浮腫の患者さんは、時々むくみ以外に困ってしまうこととして、「痛み」を訴える方がいらっしゃいます。

リンパ管内圧が高まり、脂肪の内圧も高まるため、神経を圧迫して痛みが出てしまうのです。

迂回路を作成しリンパ管、皮下の内圧が下がれば神経刺激による痛みは改善します。

 

そして、リンパ浮腫の最も怖い合併症が「蜂窩織炎」です。

手術によってリンパ液の流れが改善すると、体の免疫機能が正常に近づき、蜂窩織炎を発症しにくくなります。リスクを減らすことにつながります。

 

このように個人差はありますが、改善することがたくさんあるため、手術をすることをおすすめします。

ただし、リンパ浮腫の手術は効果的な治療法の一つですが、リンパ浮腫が進行して皮膚が硬化しリンパ管の管自体の変性がすすんでいる方は、効果を感じられない場合もあります。

また、癌の治療で切除したリンパ節と同じ数だけ吻合できるわけではないため、効果を実感するまで時間がかかる方もいらっしゃいます。その場合も追加手術が必要になることもあります。

加齢のせいで、リンパ管の機能自体が落ちてしまい、何回も手術しなければ治らない場合もあります。

加齢とともに動く量が減るため、リンパ液の流れもゆっくりですが少しずつしか静脈へ戻らなくなる方も中にはいらっしゃいます。

時間が経てば経つほど、効果を感じにくいものです。そのため手術は一回きりとは限りません。

 

リンパ浮腫の初期に手術をすることが治療する上で重要と考えています。

 

リンパ管細静脈吻合術(LVA)は通常、保険診療(健康保険が適用されます)で行います。

対象者は、リンパ管の機能に障害があり浮腫をおこしている方です。

以前に他の病院でLVAの手術を受けている方でも、別の病院やクリニックで追加の手術を受けることが可能です。

 

この手術は入院して全身麻酔をかけて行う場合と、日帰り手術で局所麻酔で行う場合があります。

当院では入院はできないので、必要に応じて関連病院へご紹介させて頂きます。

 

初診の問診では下記の点を特に細かく確認させて頂きます。

  • これまでにどこで何の病気の治療をしてきたか
  • 受けたことのある手術
  • 飲んでいる薬
  • アレルギー

リンパ浮腫は癌を患っていた患者さんが多く発症する病気で、癌の治療は非常に重要です。

  • 手術の術式とリンパ節を切除したかどうか
  • 放射線照射や抗がん剤治療を行っているかどうか
  • その予定があるかどうか

も確認させて頂きます。そのほかに注意事項がいくつかあります。

  • 静脈瘤はないか?(静脈の逆流があると吻合しても効果がありません)
  • 蜂窩織炎(感染)はないか?

これはLVAをできるかどうかを見極めるポイントでもあります。

静脈瘤があるとリンパ浮腫も合併するため、先に静脈の治療をして頂くよう連携施設や専門クリニックへご紹介致します。感染がある場合、手術はできません。点滴の抗菌薬を流す必要があるため、入院して治療します。こちらもすぐにご紹介致します。

 

これらを確認後、次回に検査を行います。

初診では問診と触診など行います。その次の外来で検査を行います。次のページで検査を具体的にご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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