ワキガと多汗症
ワキガと多汗症は原因となる汗腺が違います。そのため治療法も変わるので、医師による診察と適切な治療を選択することが大切な疾患です。
わきの下の異なる汗腺
わきには2種類の分泌腺、「アポクリン腺、エクリン腺」と「皮脂腺」があります。アポクリン腺から汗が出て、皮脂腺から皮脂が出ますが、これらが混ざり合い、細菌により強いにおいを発します。これが「ワキガ(腋臭症)」です。
エクリン腺から汗が大量に出ることを「多汗症」と呼びます。
この二つ、「ワキガ(腋臭症)」と「多汗症」が合併することがあります。
異なる汗腺に対して適切に治療する
アポクリン腺は皮膚の下、深い部分にあります。そこまで到達するには手術による摘出術が最も効果的です。
エクリン腺は皮膚の下、浅い部分にあります。皮膚のすぐ下の組織を剥がすと血流が悪くなり、皮膚壊死したり、内出血など合併症が多くあり手術による摘出術は効果的とは言い切れません。そこで、レーザー治療や注射を行います。
一番悩んでいることは?
今、ご自分で最も悩まれていることを考え直してみてください。
例えば、
- わきから出る特有のにおいに悩んでいる
- においはそこまでではないけど、わき汗がとにかく多い
- わきのにおい、わき汗の量、どちらも困る
だいたい上記の3つに当てはまるのではないでしょうか。上から順番に、
- 手術
- 汗とめ注射、レーザー
- 注射、レーザー、手術 いずれも適応?
となっております。
汗とめ注射(ボトックス注射)
エクリン腺を抑制し分泌をそもそも抑えてしまいます。出てくる量が減り、においも軽減します。
受診当日に、日帰りの局所麻酔(クリーム推奨)ででき、切開することがないため、傷跡はほとんど目立ちません。
手術はちょっと抵抗がある・・・という方にまずはおすすめです。
- 発汗エリアよりやや大きめの範囲をマーク。
- 麻酔クリームを塗布。
- 麻酔が効いたら1㎝おきくらいにごく少量(1単位)ずつ、片方で30~50単位を皮内あるいは皮下注射していきます。
注射を打った後、内出血や違和感が出ることがあります。効果は1週間後くらいから徐々に感じられます。
術後6カ月程度効果が持続するので、汗じみが服について悩む方には季節問わずおすすめです。
治療は自費ですが、傷跡がほとんど目立たないというのが特徴です。
レーザー治療(バーチュRF)
多汗症、ワキガの原因となるアポクリン腺とエクリン腺ですが、こちらを切開せず(切らずに)治療する方法です。36本の極細針を使い均一にわきの皮下に熱エネルギーを照射し、においの元、汗の元となるこの2つを破壊しスピーディーに治療します。極細針でかつ冷却機能もあるため痛みは最小限に抑えられます。
- 切らない治療 傷跡が残らない
- 30分程度(麻酔、冷却時間を除く)
- 痛みは最小限
- 皮膚へのダメージが少ない
- ダウンタイムが少ない
- 再発の場合も治療可能
- 1~2回の照射で効果を実感できる
当院では、麻酔はクリーム麻酔か局所麻酔の注射を打ち痛み止めをします。
傷跡はほとんど残りませんが、施術後は1週間ほど赤みと内出血がみられることがあります。2~3週間程度で治まってきます。1カ月あけて次の照射が可能です。
当日はシャワーでき、入浴は翌日から可能です。手術のときと異なり、日常生活に制限がないのが大きな特徴です。
子どものワキガ
思春期の多感な頃、アポクリン腺も発達しわきのにおいが気になるようになってきます。同時にニキビもひどくなることがあります。成長とともにどちらも改善していきますが、中学校、高校、大学と学生生活を送る上で悩みになることもしばしばあります。人間関係も悪くなることもありますね。
子どものワキガは手術より、注射かレーザーがおすすめです。成長とともに体も変わるため、傷跡が残る治療は後回しにした方がよいです。また、手術は剪除法という健康保険で行う手術がありますが、両脇の傷が特に問題となることがあります。こちらは子どものうちは選択しない方がよいと考えます。
手術(保険診療)
ワキガの手術は「剪除法」という方法があります。古くから行われてきた方法ですが、保険でできる手術とはいえ、両脇の傷跡が大問題でした。脇の傷というのは、「肥厚性瘢痕」あるいは「ケロイド」、または「瘢痕拘縮」です。赤い線状の盛り上がり、ミミズ腫れ、引き連れが問題で、腕があがらなくなったり、腕を動かすと引き連れて痛みが出たりします。また、両脇の皮下に瘢痕組織を形成し、硬くなっていることがあり、見えない部分で瘢痕が悪さしていることがあります。健康保険の手術ですが、第一選択は注射かレーザーです。体への負担が少なく、すぐに日常生活に戻れて、ダウンタイムが少ないからです。
また、成長や生活スタイルの変化で体も変わるので、メスを加えるのは最後まで控えた方が得策と考えます。