
健康的な食事をしたいのに、家族が協力してくれない。
そんなときは?
栄養について学ぶほど、自分だけでなく家族の食生活も気になるようになります。
「もっと野菜を食べてほしい」
「加工食品を減らしてほしい」
「せっかくなら家族みんなで健康になりたい」
家族を大切に思っているからこそ、そう考えるのは自然なことです。
でも、ここで覚えておきたいことがあります。
自分の食事は変えられても、家族の食事までコントロールすることはできません。
むしろ、変えようとすればするほど、相手が抵抗してしまうこともあります。
「正しい食事」を強要すると、なぜ抵抗されるのでしょう?
「これは身体に悪いから食べないで」
「こっちを食べたほうがいい」
「もっと野菜を食べなさい」
たとえ内容が正しくても、繰り返し言われれば「食べるものを管理されている」と感じることがあります。
特に今のところ自覚症状がなく、自分は健康だと思っている人にとっては、
「将来の健康のために」
「炎症を抑えるために」
「腸内環境のために」
と説明されても、あまり実感がありません。
こちらにとっては大切な健康情報でも、相手にとっては「また健康の話か」という雑音になってしまうことがあります。
だからこそ、説得することより、本人が興味を持つタイミングを待つことも大切です。
「身体にいいから」ではなく、「おいしいから」
健康志向の食生活というと、
我慢する。
好きなものを禁止する。
味気ないものを食べる。
そんなイメージを持っている方もいます。
でも、本来は反対です。
旬の野菜には、その季節ならではの味があります。
新鮮な魚や肉は、過剰な味付けをしなくても素材そのもののおいしさがあります。
ハーブやスパイスを使えば、塩分や調味料だけに頼らなくても香り豊かな料理になります。
そして野菜や果物には、赤、橙、黄、緑、紫……と、人工的につくらなくても驚くほど美しい色があります。
食材そのものの味を楽しむ。
天然の色を楽しむ。
季節を感じる。
自然から受け取っている恩恵を感じる。
健康的な食生活は、「制限」ではなく、食の楽しみ方を増やすことでもあります。
食事は単なる「栄養補給」ではありません
私たちは食べたものから身体をつくっています。
脂質は細胞膜の材料になり、アミノ酸は身体を構成するタンパク質の材料になり、ビタミンやミネラルはさまざまな代謝反応を支えています。
そして植物に含まれるポリフェノールやカロテノイドなどのPhytonutrientsも、生体内のさまざまなシグナルに関与します。
つまり食事は、単に「カロリーや栄養素を補給するもの」ではありません。
Food is information.
Food is medicine.
毎日の食事は、私たちの身体にさまざまな情報を届けています。
だから私は、食事をもっとポジティブに考えてほしいと思っています。
綺麗になれる食事。
ご機嫌になれる食事。
自分の身体を守ってくれる食事。
「身体に悪いものを避けなくては」と考えるよりも、
「今日は自分の身体に何を届けよう?」
と考えてみる。
それだけでも、食事との向き合い方は少し変わります。
天然の「色」を食卓に取り入れてみる
健康的な食卓をつくる簡単な方法のひとつが、食材の天然の色を意識することです。
トマトや赤パプリカの赤。
にんじんやかぼちゃの橙。
葉物野菜やブロッコリーの緑。
ブルーベリーや紫キャベツの紫。
植物の色は見た目が美しいだけではなく、カロテノイド、アントシアニンをはじめとするPhytonutrientsにも由来しています。
「栄養のために食べなければ」と難しく考えなくても、
今日は食卓を何色にしよう?
と考えるだけなら、料理は少しクリエイティブになります。
健康のための食事を「義務」にするのではなく、自然がつくった色や味を楽しむことから始めてもよいのです。
家族を変えるより、食卓の環境を変えてみる
家族に健康的な食事をしてほしいとき、
「どうすれば食べさせられるか」
ではなく、
「どうすれば自然に食べたくなるか」
と考えてみます。
例えば、色鮮やかな野菜料理を食卓に置いてみる。
果物をすぐ手に取れる場所に置いてみる。
魚や野菜を「健康のため」ではなく、おいしく食べられる料理にしてみる。
好きな料理は残しながら、付け合わせを少し変えてみる。
100点の健康食に一気に変える必要はありません。
お母さんが楽しそうにしていることが、いちばんのきっかけになることも
家族が健康志向の食事に抵抗を感じているのであれば、無理に参加させなくてもよいと思います。
まずは、お母さん自身が楽しんでみてください。
新しい野菜を買ってみる。
色の組み合わせを考えてみる。
ハーブを育ててみる。
新しいレシピを試してみる。
きれいに盛り付けてみる。
そして、
「これは身体にいいから食べて」
ではなく、
「これ、おいしくできたから食べてみる?」
くらいでよいのです。
強要せずに、自分自身が楽しそうに健康的な食事を続けていると、
「最近何を食べているの?」
「それ、おいしそう」
「ちょっと食べてみようかな」
と、家族のほうから興味を持つことがあります。
興味を持つタイミングは、本人に任せる。
それも家族と健康的な食生活を続けるための大切な方法です。
「食べてはいけない」より、「食べたい」を増やす
健康的な食生活を続けるために、家族全員が同じ価値観になる必要はありません。
食事は栄養であると同時に、楽しみであり、文化であり、家族との時間でもあります。
だからこそ、
禁止するより、選択肢を増やす。
説得するより、おいしさを共有する。
強要するより、自分が楽しむ。
そして、家族が興味を持つまで少し待ってみる。
健康的な食生活とは、完璧な食事を家族全員に守らせることではありません。
自然の色や味を楽しみながら、自分の身体にとって心地よい選択を少しずつ増やしていくこと。
その楽しさが伝わったとき、家族の食卓も自然に変わり始めるかもしれません。
UTOPIART CLINICの栄養外来では、検査値や栄養素だけを見るのではなく、その方のライフスタイルや家族との食生活も考えながら、無理なく続けられる食事をご提案しています。