美容整形のダウンタイムを長引かせないために。手術前・術後にできること
Netflix『ダウンタイム』から考える、美容医療のリアル
Netflixシリーズ『ダウンタイム』では、美容医療を受ける患者さんだけでなく、手術をする医師やクリニック側のさまざまな姿が描かれています。
美容整形というと、
「どんな手術を受けるか」
「どの先生にお願いするか」
ということに目が向きがちです。
もちろん、どちらもとても大切です。
でも形成外科医として、もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。
ダウンタイムは、手術が終わってから始まる
手術が無事に終われば、それですべてが終わるわけではありません。
手術によって影響を受けた組織は、その後、時間をかけて回復していきます。
腫れや内出血が出たり、傷が少しずつ落ち着いたりしながら、身体は回復していきます。
この過程には、手術の内容や医師の技術だけでなく、患者さん自身の身体の状態や術後の過ごし方も関係します。
たとえば、
- 十分な睡眠がとれているか
- 飲酒や喫煙を控えられているか
- 術後に必要以上に身体を動かしていないか
- 栄養状態に大きな偏りや不足がないか
- 医師から伝えられた術後の注意事項を守れているか
こうしたことも大切です。
手術後こそ、しっかり眠る
身体が回復していくためには、十分な休息が必要です。
仕事や家事などで忙しい方ほど、
「手術は終わったから、翌日からいつも通りで大丈夫」
と思ってしまうかもしれません。
ただ、術後は身体が傷を治そうとしている時期です。
無理に予定を詰め込まず、医師から指示された期間は安静を心がけ、十分な睡眠をとることも大切です。
大切な仕事やイベントがある場合は、手術日だけでなく、術後の回復期間まで含めてスケジュールを考えることをおすすめしています。
飲酒や喫煙についても、術前から確認を
飲酒や喫煙も、手術前後には注意が必要です。
どのくらいの期間控える必要があるかは手術内容や患者さんの状態によって異なるため、担当医の指示に従ってください。
普段から飲酒や喫煙の習慣がある方は、カウンセリングの際に隠さず伝えていただくことも大切です。
「これくらいなら大丈夫だろう」と自己判断せず、分からないことは事前に確認しておきましょう。
傷を治すためには「材料」も必要です
もうひとつ、私が大切だと考えているのが栄養状態です。
身体が傷を治していくためには、さまざまな栄養素が必要になります。
たとえば、タンパク質や鉄、亜鉛、ビタミン類なども、創傷治癒に関わる栄養素です。
だからといって、手術前に特定のサプリメントをたくさん摂ればいい、ということではありません。
大切なのは、必要な栄養を不足させないことです。
実は「手術前」の身体も大切です
ダウンタイムという言葉から、どうしても「手術後」のことをイメージすると思います。
でも形成外科では、手術を受ける前から患者さんの全身状態を整えておくことも、術後の回復を考えるうえで重要だと考えています。
1本目の記事でもお話ししましたが、糖尿病、高血圧、貧血などの基礎疾患や、喫煙、睡眠不足、栄養状態なども術後の経過に関係します。
そのため、診察では「顔のこの部分を変えたい」という希望だけではなく、既往歴や服用している薬、普段の生活について確認することがあります。
美容医療であっても、手術を受けるのは「顔の一部分」ではなく、一人の人間の身体だからです。
「早く治す方法」を探す前に
美容整形を受けると、少しでも早く腫れを引かせたいと思うのは自然なことです。
インターネットやSNSには、
「これを食べるといい」
「これを飲めば腫れが早く引く」
「この方法ならダウンタイムが半分になる」
といった情報もたくさんあります。
ただし、術後の状態や受けた治療によって、適切な対応は異なります。
何か特別なことをする前に、まずは担当医から指示された術後の過ごし方を守ること。
そして、気になる症状があれば自己判断せず、医療機関に相談することが大切です。
「どんな手術を受けるか」だけではなく、「どんな身体で受けるか」
美容医療では、
どんな手術を受けるか。
誰に手術してもらうか。
この2つはとても大切です。
でも私は、そこにもうひとつ、
「どんな身体の状態で手術を受けるか」
という視点も持っていただきたいと思っています。
手術をするのは医師。でも、傷を治していくのは自分自身の体。だから私は、手術だけではなく、その方の身体の状態まで見ることを大切にしています。
美容医療は、施術をして終わりではありません。
手術前から身体の状態を整え、術後はきちんと休み、必要な栄養を不足させない。
一見、美容整形とは関係がないように思える日々の身体の状態も、ダウンタイムを考えるうえでは大切な要素のひとつです。
監修・執筆
松宮 詩依
UTOPIART CLINIC EBISU 院長
形成外科医