美容整形は手術直後が完成ではない。形成外科医が考える「数ヶ月後の仕上がり」

Netflix『ダウンタイム』から考える、美容医療のリアル
美容整形のダウンタイムを長引かせないために。手術前・術後にできること

 

美容整形の症例写真を見ていると、

「術直後」
「1週間後」
「1ヶ月後」

といった写真を目にすることがあります。

 

では、医師は実際にどの時点を「仕上がり」と考えて手術をしているのでしょうか。

Netflixシリーズ『ダウンタイム』を観ていると、手術をする場面や、その結果に一喜一憂する患者さんの姿が描かれます。でも実際の美容外科・形成外科では、手術が終わった瞬間が完成ではありません。

 

むしろ手術直後ではなく、腫れが引いて組織が落ち着いた数ヶ月後の状態を想定して、手術を設計することが重要です。今回は、美容整形の「完成」を医師がどのような時間軸で考えているのか、お話しします。Netflixシリーズ『ダウンタイム』公式ページ
 

手術直後の見た目が、そのまま仕上がりになるわけではありません

手術では、切開した時点から組織が腫れ始めます。

そのため、手術直後の状態だけを見て、

「思っていたより腫れている」
「左右が違って見える」
「完成形と違う気がする」

と不安になる方もいらっしゃいます。

ただ、術後には腫れや内出血などが生じることがあり、時間とともに組織の状態も変化していきます。

手術内容によって経過や落ち着くまでの期間は異なりますが、術直後だけで最終的な仕上がりを判断できない治療は少なくありません。

だからこそ私たちは、手術当日だけを見るのではなく、その先を想定して手術をします。

手術前の「デザイン」から、その先を考えている

美容外科の手術では、手術室に入ってから初めて形を考えるわけではありません。

術前の診察やデザインの段階から、

どの位置に落ち着くのか。
腫れが引いたあとにどう見えるのか。
傷がどのように成熟していくのか。

そうしたことまで考えながら手術計画を立てます。

つまり、医師が見ているのは、目の前の「今」だけではありません。

数週間後、数ヶ月後の状態から逆算して、今何をするのかを考えています。

ダウンタイムは「何も起きていない期間」ではない

「ダウンタイム」という言葉からは、

手術を受ける
↓
腫れる
↓
腫れが引く
↓
完成

というイメージを持つ方も多いかもしれません。

 

でも実際には、その間も身体の中ではさまざまな変化が起きています。

腫れが落ち着き、組織がなじみ、傷も時間をかけて変化していきます。

つまりダウンタイムは、単に「人前に出づらい期間」ではなく、身体が回復していく時間でもあります。

だからこそ、術後すぐの状態だけを見て焦らないことも大切です。

もちろん、通常の経過なのか、診察が必要な状態なのかを患者さん自身で判断する必要はありません。

不安なことや気になる変化があれば、遠慮せず担当医に相談してください。

数ヶ月後だけではなく、「数年後」を考える治療もあります

治療によっては、さらに長い時間軸で考える必要があります。

たとえば、インプラントなど体内に異物を入れる治療です。

こうした治療では、目の前の仕上がりだけではなく、数年後、さらにその先に起こり得る変化まで考えてカウンセリングすることが重要だと考えています。

今きれいに見えるか。

希望している形になるか。

もちろん、それも大切です。

でも、身体は年齢とともに変化していきます。

長く身体の中に存在するものだからこそ、その治療を受けるメリットだけではなく、その後についても理解したうえで選択してほしいと思います。

 

私は長期的な影響まで考えると、必要性の低い異物を安易に体内へ入れる治療については慎重に考えています。これは、「異物を使う治療はよくない」という意味ではありません。必要性があり、患者さんがメリットとリスクを理解したうえで選択する治療もあります。大切なのは、今の見た目だけで判断しないことです。

「今できる治療」と「今やるべき治療」は同じとは限らない

美容医療には、たくさんの選択肢があります。

患者さんから、

「これをやってみたいです」
「SNSで見たこの施術はできますか?」

とご相談いただくこともあります。

医学的に「できる」治療であったとしても、その方にとって今、本当に必要なのかは別の話です。

現在の状態。

希望する変化。

治療による負担。

ダウンタイム。

数ヶ月後、数年後に考えられる変化。

そうしたことを含めて考えた結果、場合によっては「今はやらない」という選択肢もあります。

美容医療では、何かをすることだけが答えではないと私は考えています。

症例写真を見るときにも「いつの写真か」を見てほしい

これから美容医療を検討する方に、もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。

症例写真を見るときには、「術後いつの写真なのか」にも注目してみてください。

同じ治療でも、術直後と1週間後、1ヶ月後、数ヶ月後では見え方が異なることがあります。

症例写真は治療を検討するうえで参考になる情報ですが、一枚の写真だけですべてを判断することはできません。

カウンセリングでは、

「いつ頃から自然に見えますか?」
「最終的な状態はいつ頃判断できますか?」
「その間にどのような変化がありますか?」

と聞いてみてもいいと思います。

美容医療だからこそ、「その先」を考える

美容医療は、患者さん自身が「こうなりたい」という希望を持って受ける医療です。

だからこそ、その希望を大切にしたい。

一方で医師としては、目の前の希望だけではなく、その治療をした先まで考える必要があります。

手術直後だけではなく、数ヶ月後。

治療によっては、数年後、その先まで。

 

美容医療で大切なのは、「今きれいに見えること」だけではありません。

時間が経ったときにも、その治療を受けてよかったと思えるか。

私自身は、そこまで考えながら患者さんと治療を選んでいきたいと思っています。

 

Netflix『ダウンタイム』をきっかけに、形成外科医の視点から「現実の美容医療」を考えるこのシリーズ。次回は、ドラマでも印象的に描かれていた、「形成外科と美容外科は何が違うのか?」についてお話しします。「形成外科専門医なら美容外科医としても上手なのか?」というところまで含めて、形成外科医の立場から考えてみたいと思います。

 

監修・執筆

松宮 詩依

UTOPIART CLINIC EBISU 院長

形成外科医

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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