
涼しくなって眠りやすくなったはずなのに、朝からだるい。夜は寝ているのに、疲れが抜けない。
そんなときに見直したいのが、睡眠の「時間」「質」「リズム」です。睡眠には、日中の活動から休息へ切り替え、脳と身体の状態を整える役割があります。
毎日の睡眠習慣と、生まれ持った体質の両方から、自分に合った眠りを考えてみましょう。
脳と身体が「おやすみモード」に入るために
身体には、朝に活動し、夜に休息するためのリズムがあります。
そのリズムに関わるのが、コルチゾールとメラトニンです。コルチゾールは通常、朝に高まり、夜に向かって低下します。一方、メラトニンは夕方から夜にかけて増え、身体に夜の到来を知らせます。
一般的な昼夜の生活では、メラトニンの血中濃度は午前2?4時ごろに高くなります。その時刻は、体内時計や生活リズム、光の浴び方によって変わります。
夜まで明るい照明の下で過ごしたり、仕事や情報に触れ続けたりすると、休息へ向かう準備が遅れやすくなります。就寝前は光や刺激を減らし、心と身体の緊張をゆるめる時間をつくりましょう。
起床時刻をそろえ、必要な睡眠時間を確保する
睡眠リズムを整える基本は、毎朝の起床時刻をできるだけ一定にすることです。休日も大きくずらさず、起きたら朝の光を浴びる習慣をつけましょう。
成人の睡眠時間は、7?9時間が一般的な目安です。日中の眠気や疲労感、朝の休養感も確認しながら、自分に必要な時間を確保することが大切です。
起床時刻から逆算して、睡眠時間だけでなく、眠る前に落ち着く時間も予定に入れてみてください。
眠りを支える環境と、夜の過ごし方
寝室は暗く、静かに、心地よい温度に
就寝前から照明を落とし、眠るときはできるだけ暗く、静かな環境を整えます。外の光が入る場合は遮光カーテン、音が気になる場合は耳栓など、自分に合った方法を取り入れましょう。
音や香り、呼吸でリラックスする
穏やかな音楽や心地よい香り、ゆっくりした呼吸、短い瞑想などは、夜の緊張をゆるめるきっかけになります。自分が落ち着ける方法を選び、休息へ向かう習慣にしていきましょう。
刺激の強い食事や運動は早めに
スパイシーな料理や重い夕食は、就寝の3時間ほど前までを目安にします。胸やけや胃の重さが出る方は、量や内容も調整しましょう。
激しい運動や熱いお風呂は早めに済ませ、身体の熱や興奮が落ち着く時間を確保します。心地よい温度での入浴は、就寝の1?2時間前が目安です。入浴後に身体の熱が逃げていくことが、眠りへの移行を助けます。
一日の終わりに、やさしいストレッチを
首、肩、背中、股関節など、こわばった部分をゆっくりほぐしましょう。呼吸を止めず、痛みのない範囲で気持ちよく伸ばすことがポイントです。
スマートフォンにも、おやすみ時間を
スマートフォンは枕元から離し、手を伸ばしても届かない場所に置くと、夜中に画面を見る習慣を減らしやすくなります。例えば、身体から1メートル以上離れた場所を選んでみましょう。
夜間の通信を減らしたい場合は、機内モードにし、Wi-Fi・Bluetoothもオフにします。必要な連絡を受ける場合は、通知設定を調整してください。機内モードでもWi-Fi・Bluetoothが有効になる場合があるため、設定を確認しましょう。
眠っている間に進む「脳のお掃除」
脳は日中、考える、記憶する、身体を動かすなど、活発に働いています。その活動に伴って生じる代謝産物などを運び出し、脳内の環境を保つ仕組みの一つが、グリンパティックシステムです。
この仕組みには、神経細胞を支えるグリア細胞の一種「アストロサイト」と、脳や脊髄を満たす「脳脊髄液」が関わっています。血管周囲の経路を通じた液体の移動が、細胞の間にある老廃物の処理を支えると考えられています。
いわば「脳のお掃除」として、睡眠との関係が研究されています。動物研究では、睡眠中の老廃物排出に関する知見が報告されています。
ヒトでも、ノンレム睡眠中に、ゆっくりした脳波の変化と、脳の血液量・脳脊髄液の動きが連動する様子が観察されています。さらに近年のマウス研究では、睡眠中の周期的な血管運動が、脳脊髄液を動かすポンプのように働くことが示されました。
睡眠は、記憶の整理、感情の調節、免疫や代謝の維持にも関わる時間です。良質な睡眠が、起きている間の集中力や心身の健康を支えています。
眠りにも、生まれ持った体質があります
自然に眠くなる時刻、午後のコーヒーへの反応、ストレスがかかった日の寝つきには、個人差があります。
こうした違いを理解するために、DNAの検査がヒントになることもあります。smartDNAでは、睡眠に関連する複数の代謝経路の遺伝子多型を確認し、体質を読み解くための情報として活用します。
体内時計に関わる遺伝子
CLOCKやNPAS2などは、身体の一日のリズムを調節する働きに関わります。普段の睡眠時刻や季節による変化と照らし合わせ、光を浴びる時間や生活リズムを考える手がかりにします。
メラトニンに関わる遺伝子
AANATやASMTはメラトニンの合成に、MTNR1Bは受容体の働きに関わります。
MTNR1Bについては、夜遅い食事による血糖への影響が遺伝型によって異なることが、ヒトの介入研究で報告されています。夕食の時刻や糖代謝も含めて、夜の過ごし方を検討する際の情報になります。
覚醒と休息の調節に関わる遺伝子
セロトニン、GABA、カテコールアミン、ヒスタミンなどの合成・受容・分解に関わる遺伝子についても、睡眠やストレス反応との関係が研究されています。
夜まで緊張が続く、忙しい時期に眠りが変わるなど、実際の経験と合わせて確認し、体質を理解するための補助情報として扱います。
カフェインやアルコールの代謝に関わる遺伝子
飲んだ後の反応には、代謝の個人差も関わります。遺伝子の情報に、飲む量・時刻、寝つき、夜間の目覚め、翌朝の体調を重ねることで、自分に合った付き合い方を考えやすくなります。
体質と「今の身体」を合わせて考える栄養遺伝外来
当院の栄養遺伝外来では、smartDNAの結果を、睡眠の悩み、食事、生活習慣、服薬、血液検査などと合わせて読み解きます。
例えば、カフェインを飲む時刻、夕食と就寝の間隔、朝の光、夜のストレス、栄養状態などを整理し、日常で取り組める方法をご提案します。
睡眠に関わる代謝には、タンパク質、鉄、ビタミンB群、マグネシウムなども関わっています。食事から何を摂れているか、現在の身体にどのような課題があるかを確認し、必要な栄養面の対応を検討します。
遺伝子の情報は、自分の経験を整理するための「取扱説明書」の一部です。
毎日の習慣と生まれ持った体質を理解し、夜の休息が日中の健康につながる睡眠づくりを、一緒に考えていきましょう。