リンパ浮腫の検査について
リンパ浮腫の検査について、説明したいと思います。むくみを起こす疾患は無数にあって、例えば心不全だったり、腎不全、甲状腺機能低下症などがあります。また運動不足や肥満でもむくみを起こします。まず前述した内科疾患がないか採血でチェックします。下肢であれば、静脈瘤がないかエコー等で調べる必要があります。これらの検査で原因が特定できず、過去に乳がん、子宮頸がんなどの婦人科がん、大腸がん、前立腺がんでリンパ節を取った事があれば、リンパ浮腫である可能性が強くなります。

つぎのステップはインドシアニングリーン蛍光リンパ管造影です。インドシアニングリーンは長いのでICGと略されることが多いです。この薬剤は皮下に注射するとリンパ管に入りやすい特徴があります。また、ある周波数の光を当てると、異なる周波数の光を返すという特徴があります。この特徴を利用した特殊なカメラ(図1)で撮影すると、皮下に注射されたICGがリンパ管を通っていくのをリアルタイムで見ることができます(図2)。

4カ所ほど足の甲に少量のICGを注射して、部屋を暗くしてICGカメラで観察します。リンパの流れは意外と速く、個人差はありますが正常な方なら10分ほどで足の甲に打った ICGが太ももの付け根にまで到達します。リンパ管が集まってくる部位はだいたい決まっていて、膝下ぐらいの高さから内ももに向かって数本のリンパ管が集まっていきます(図3)。リンパ浮腫の患者さんの場合、リンパ管が詰まっていたり、狭くなっているところでリンパ管に入ったICGが皮膚に向かって逆流してきます。重症になるとリンパ管が全く見えなかったり、はじめから逆流している像しか見えないことがあります。リンパ管が見えて、逆流しているだろう箇所が分かれば、リンパ管静脈吻合術:LVAが可能だろうと判断できます。

この検査の問題点は、深さが2cm程度までのリンパ管しか見えないことと、注射が痛い(検査時は麻酔を先に注射して、痛みをより少なくします)、アレルギー反応を起こす人がまれにいること、保険収載されていないことです。ですが、病態が可視化されてわかりやすく、検査のつらさもそこまで大きくないので、症状がなくとも前述した手術を過去にした経験をお持ちの方は、検査してもよいのではないかとおもいます。この疾患に限りませんが、早期発見早期治療がもっとも良い結果をもたらします。リンパ浮腫は無症状な期間が長く、症状がでてからの治療では、効果が十分でないことも多いです。
執筆者:医師 根本 仁 (日本形成外科学会専門医・指導医)