上肢(うで)・下肢に起こるリンパ浮腫
上肢におけるリンパ浮腫の症状
上肢(うで)にリンパ浮腫が起こると、腕が太くなるだけでなく、手の細かい動きに支障が出てきます。たとえば、ペンを持つ、パソコンでキーボードを打つ、洗濯物を干すなど、日常の何気ない動作がつらく感じられるようになります。

さらに進行すると、皮膚に以下のような変化が現れてくることもあります:
- 剣山のように小さく盛り上がる皮ふの突起
- キノコのように盛り上がる隆起
- ごわごわとした質感になり、ひび割れを起こす
- ひび割れた皮膚から細菌が入り、感染を引き起こす
- 皮膚や爪の変形が見られる
こうした状態を防ぐためには、日常的なスキンケアがとても大切です。保湿クリームを使って皮膚のバリア機能を保つことで、感染リスクを減らすことができます。
リンパ漏(リンパ液のもれ)
リンパ浮腫がさらに悪化すると、皮膚の下のリンパ管が拡張し、破れた部分からリンパ液がしみ出す(リンパ漏)ことがあります。この状態になると、皮膚表面に小さな穴(瘻孔)ができ、そこからリンパ液が持続的に流れ出るようになります。
リンパ漏が起きると、皮膚の状態はさらに悪化し、感染のリスクも高まります。早期の発見と適切なケアが重要です。
リンパ浮腫と蜂窩織炎(再掲)
リンパ浮腫のある部位は、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を繰り返しやすいという特徴があります。これは、皮膚に小さな傷やささくれ、虫さされなどがあると、そこから細菌が入り込むためです。とくに以下のような場面に注意が必要です:
• 足白癬(水虫)などの真菌感染があるとき
• 注射や採血で皮膚が刺激を受けたあと
• 体調不良や風邪、疲れなどで免疫が落ちているとき
蜂窩織炎は急に赤く腫れ、熱感や痛みを伴いながら短時間で広がることがあります。少しでも違和感を覚えたら、すぐに医療機関に相談しましょう。
リンパ浮腫の原因:とくに女性の下肢に多い理由
女性の下肢に起こるリンパ浮腫の多くは、「子宮がん」や「卵巣がん」の治療によって引き起こされる二次性リンパ浮腫です。以下のような手術や治療が関係しています:
• 子宮や卵巣の摘出
• 骨盤や傍大動脈リンパ節の郭清(除去)
• 放射線療法の追加
さらに以下のような疾患や外傷も原因となることがあります:
• 下肢の骨折や手術
• リウマチ、変形性関節症
• 大腿部の悪性腫瘍
• 下肢の熱傷や感染症
• 不妊治療後の影響
これらの治療や疾患によってリンパの流れが妨げられ、時間の経過とともに片足から両足へとむくみが広がることもあります。手術後すぐに出ることもあれば、5年、10年と時間がたってから発症する場合もあります。
女性は、腕よりも足のむくみの方が日常生活に支障が出やすく、靴やズボンが合わなくなることで自覚しやすい傾向があります。また、見た目の変化が精神的にも大きな負担となることがあります。
まとめ
リンパ浮腫は、静かに、でも確実に進行していく疾患です。しかし、早めに気づき、日常的なケアを続けることで、進行を防ぎ、生活の質を保つことができます。
• 足や腕がむくむ
• 皮膚が硬くなる、ざらつく
• 赤みや熱感がある
• 靴や服が合わなくなった
• 感染(蜂窩織炎)を繰り返す