リンパ浮腫の発症原因・進行と検査・治療法

リンパ浮腫が起こる原因について
リンパ浮腫には、先天的なリンパ管の異常によって生じる「一次性リンパ浮腫」と、手術や放射線治療などの後に起こる「続発性リンパ浮腫」があります。
続発性リンパ浮腫の主な原因(とくに女性の下肢)
女性の下肢リンパ浮腫の多くは、婦人科がんの治療後に起こるものです。特に以下のような手術や治療がきっかけになります:
- 子宮がん(リンパ節郭清を伴う手術)
- 卵巣がん
- 骨盤・傍大動脈リンパ節郭清
- 放射線治療の追加
- 子宮・卵巣摘出、大網切除など
また、下肢の骨折や整形外科手術、不妊治療後、股関節の手術、さらには外陰部がん・皮膚の感染症・熱傷なども原因となることがあります。片側だけにむくみが現れることもありますが、長い時間をかけて両足に広がることも。発症のタイミングは、手術の直後ではなく、5年後、10年後と遅れてくることもあります。
進行するリンパ浮腫と感染のリスク
リンパ浮腫は放っておくと、皮下組織が線維化し、硬く、戻りにくい状態に進行することがあります。さらに、次のような軽い傷からでも「蜂窩織炎(感染症)」を引き起こすリスクがあります。
• 虫さされ
• 毛穴の炎症(毛包炎)
• 水虫(白癬症)
• かすり傷やささくれ
これらをきっかけに、潜在的だったリンパ浮腫が急に進行することもあるため、皮膚を守る・傷をつくらない・保湿を続けることがとても大切です。
検査によるリンパの流れの評価:ICGリンパ管イメージング
リンパの流れを目で見て評価する方法として、「ICGリンパ管造影(インドシアニングリーン法)」があります。
検査の流れ
1. 指先などにICGという蛍光色素を注射
2. 特別なカメラ(PDE)で、リンパの流れを観察
この検査によって、次のような情報が得られます:
• 正常な流れ:細くまっすぐな「線状パターン(LP)」
• 異常な逆流:皮膚に染み出すような「ダーマル・バックフロー(DB)」
こうしたパターンを見ることで、リンパ浮腫の重症度や手術適応を判断することができます。
リンパ浮腫の手術治療:リンパ管細静脈吻合術(LVA)
LVA(リンパ管細静脈吻合術)は、詰まったリンパの流れを新たなルートで静脈へバイパスさせる手術です。皮膚に小さな切開を行い、顕微鏡を使って繊細にリンパ管と静脈をつなぎます。
LVAの効果
• むくみの軽減
• 蜂窩織炎の発症頻度が減る
• 手術後も、引き続き弾性ストッキングやリンパドレナージ(マッサージ)などのケアが必要ですが、日常生活が格段に楽になると感じる方が多い治療法です。
リンパ浮腫と向き合う日々のケア
リンパ浮腫は、自分で症状をコントロールしていくことが何より大切です。
患者さんによく行われている自己管理
- 弾性ストッキングの毎日装着(無理のない範囲で)
- 週1~数回のリンパドレナージ(自分・家族・機械によるマッサージ)
- 保湿ケアを習慣にする
- 長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける
- 体調不良・ストレスに気をつける
おわりに
リンパ浮腫は、一度発症すると長く付き合っていくことになりますが、正しい知識とセルフケアによって、生活の質を大きく改善することが可能です。