リンパ浮腫の治療改善ケースレポート

CASE REPORT
ユートピアートクリニック恵比寿,松宮院長,SHIE MATSUMIYA
子宮頸がん術後のリンパ浮腫でお悩みだった30代女性の症例です。LVA(リンパ管静脈吻合術)により、8cmあった足のむくみの左右差が3cmまで改善したケースを解説します。

 

子宮頸がんにより、広範子宮全摘とリンパ節郭清の手術を受け、手術後まもなくして左下肢がむくみやすくなったそうです。通院している病院の看護師さんから弾性ストッキングを着用を指導され、履いているとむくみは軽減してましたが、4-5年ほど経過し、徐々に弾性ストッキングを装着しても、むくみは取れなくなりました。

 

左下肢の重だるさや易疲労感を感じ、また左下肢の蜂窩織炎(皮膚と皮下脂肪の細菌感染で、皮膚が赤くはれて熱を持ち、痛みを生じます。ときに全身の発熱を来します。)を年に1-2回ほど生じるようになり、リンパ節郭清術を受けてから6年ほど経って初診となりました。

 

診察したところ、左大腿は硬く張っており、皮膚色が軽度の赤みがあった。下肢の周径は最大8cmの左右差がありました。過去の経過から二次性リンパ浮腫(がん手術などでリンパ節を除去した後に生じるリンパ浮腫を指します)が最も可能性が高いとかんがえられました。

 

各種検査で、リンパ浮腫以外の浮腫を来す疾患がないことを確認したのちに、ICGリンパ管造影(コラム“リンパ浮腫の検査”を参照ください)施行しました。右下肢はリンパ液の滞りなく正常でしたが、左下肢はリンパ液が皮膚にむかって逆流してくる所見がありました。リンパ管が残存していることもわかりましたので、リンパ管静脈吻合術(LVA コラム“リンパ浮腫について”を参照ください。)を施行しました。左大腿と下腿に5か所 2㎝ほどの切開をおいて、顕微鏡下にリンパ管と静脈を見つけたのちに、これらを吻合しました。リンパ管の状態は比較的良好で太さは0.5mm前後で、中には1.0mmほどのものもありました(リンパ管の太さは0.3-0.6mmほどが多く、1.0mmはかなり太いです)。いくつか吻合していくと、尿量が突然増え始めました。はっきりと証明されていませんが、手術中から尿量が増える例はLVAの効果がよりあるのではないかと感じています。手術中から下肢に貯留していたリンパ液が静脈に入り、腎臓から尿になって排出されたと考えられるからです。

 

無事に手術がおわり、抜糸に10日後に来院された際にすでに左下肢は柔らかく少し細くなったかもとおっしゃっていました。さらに術後1か月で左下肢は細くなり下肢の疲れや、仕事(立ち仕事)が楽になったと喜んでいました。術後半年でも症状緩和している状態が維持され、8cmもあった下肢の周径が3㎝まで左右差が縮まりました。蜂窩織炎も生じていません。

 

リンパ浮腫は過去には難病でなかなか改善は難しく進行を待つばかりでしたが、現在では治療が可能となってきています。完全治癒とまではなかなか難しいですが、改善を目指すことはできます。

 

ここに紹介した患者さんの場合はリンパ節を切除した手術から比較的早め(二次性リンパ浮腫の患者さんは、リンパ節を切除してから多くは7,8年以上たってから症状が出始め、LVAなどのリンパ浮腫に対する手術を受けるのが、リンパ節切除の手術から10年を超えることはざらにあります)にLVAができたため、治療成績が良かったのだと考えられます。リンパ浮腫は進行していく疾患で、できるだけ早く治療介入できたら良いなと感じています。

 

 

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