リンパ浮腫 LVA手術2回目で改善した症例(50代女性)
CASE REPORT

子宮体がんで子宮全摘とリンパ節郭清をうけて7-8年は症状なく経過していましたが、左下肢に浮腫が出始め、徐々に浮腫がひどくなり、リンパ節郭清術を受けてから12年経過して初診となりました。仕事は立ち仕事が多く、左下肢が重く、歩きづらいとのことでした。各種検査したところ、左下肢静脈逆流を認めました。静脈うっ滞もむくみを来す疾患ですが、リンパ浮腫のむくみ方とやや異なり、色素沈着などを来すことが多いです。
この患者さんはそのような所見は無く、むくみの本態はリンパ浮腫だろうと考えられました。リンパ管静脈吻合術(LVA コラム“リンパ浮腫について”を参照ください)はリンパ管を静脈につなぐことで、リンパの流れをバイパスする方法ですので、静脈が逆流していると、LVAの効果が薄くなると考えられます。ですので、先に血管外科の先生にお願いして、静脈逆流の治療をしていただきました。静脈の治療後も浮腫の状態はあまり変化がなく、やはりリンパ浮腫によるむくみだろうと考えられました。ICGリンパ管造影(コラム“リンパ浮腫の検査”を参照ください)の結果、左下肢だけではなく、症状のない右下肢にもリンパ液の逆流を認めました。両側下肢のLVAを施行しました。左下肢は5か所、右は1か所でリンパ管を近傍の静脈に吻合しました。リンパ管の状態もそれほど悪くなく、改善が期待できました。左下腿の重だるさが軽くなり、やわらかくなりましたが、周径はあまり変わらず、大腿は症状が残存していました。術後6か月たった時点でICGリンパ管造影を再度行ったところ、やはりリンパ液の逆流がまだまだ残っていましたリンパ管吻合部の開存もあいまいでした。患者さんとよくよく相談し、再度LVAを左下肢にのみ行うこととしました。症状が残っている大腿部を中心に3か所LVAを施行しました。術後経過は良好で、左大腿の皮膚が柔らかくなり、だるさも取れてきました。周径も減少傾向であり、術後3か月で最大-4cmとなり、とても喜んでいただけました。
リンパ節郭清から年月が経つにつれて、LVAの改善度は少なくなる傾向にあります。早く治療が開始できればよいのですが、経過した年数は取り戻せません。この患者さんのように、1度の手術で効果が薄くても2回目と複数回行うことで、効果が出てくることもあります。もう治らないとあきらめずに、根気よく治療していくことが勧めらます。