マルチ?専門バカ?

多岐にわたる経験がもたらす「バランスの取れた手術」

根本医師コラム,多岐にわたる経験がもたらす「バランスの取れた手術」

 

こんにちは。当院医師の根本です。 今回は、私が形成外科医として大切にしている「多分野の視点」が、お客様の美と機能にどう繋がるかについてお話しします。

 

自分のキャリアや現在扱っている手術を俯瞰してみると、世の中的には“専門性”をとんがらせていっている風潮に反して、じつにマルチなことをやっている(もちろんその中で専門を自負している分野はありますが)。皮膚科後期研修として1年3か月皮膚科を勉強し、形成外科医として最初の10年は、褥瘡(床ずれ)や糖尿病の合併症である足の壊死などの一般形成外科に加え、顎顔面外科領域(顔面骨の骨折や骨切り、眼瞼形成など)をやってきた。また手の外傷も診ていたため、手もある程度対応できる。アメリカ留学では、基礎研究が主たる仕事で軟骨再生・代謝を研究していた。その中で幹細胞を扱ったりした。また直属の上司が鼻形成の専門家だったので、毎週手術を見に行ったりしていた。アメリカは超分業社会なので、その上司は毎週ほぼ同じ手術しかしていなかった。その後の10年は台湾留学をはさみ、現在に至るまで口腔がんや乳がん、肉腫の切除後の再建手術を主に行っている。さらにリンパ浮腫の治療もしている。若手の先生が対応困難であれば、褥瘡や顔面骨骨折の手術も今でも行う。患者さんによくなってほしいという気持ちと形成外科がもつ整容と機能への興味・探求心がそうさせているのかなと思う。こうなると“専門”を尊ぶ世の中においては器用貧乏といわれるかもしれない。

 

ある学会で、口腔がんの再建ばかりやっていた先生に乳房再建の指導をするときに、クセを矯正することが難しいことが結構あると大御所の先生が言っていた。それが何のことか、その時は私には全くわからなかった。後々考えてみると、乳房の形態再現の繊細さのことかなと思う。多分自分の中でそんなの当たり前と思っていることは、一つの分野しかやってこなかった先生にとっては当たり前ではないのでしょう。マルチにできるということの利点は、多分野をやっていることで、すんなり新しいことができたり、異なる分野に技術を応用することができ、よりよい結果を出せたりすることだと思う。またそれぞれの部位(目や鼻、口など)の重要な点を理解しているということでバランスの良い手術が提供できるのではないかと思う。

 

執筆者:医師 根本 仁 (日本形成外科学会専門医・指導医)

 

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