同じ手術でもダウンタイムは医師によって違う?
Netflix『ダウンタイム』から考える、美容医療のリアル
タイトルにもなっている「ダウンタイム」とは、美容医療の施術後に生じる腫れや内出血などが、自然な状態に落ち着いていくまでの回復期間のこと。作品の中でも重要なモチーフとして描かれています。
Netflixシリーズ『ダウンタイム』公式ページ
実際に美容医療の現場に立つ形成外科医としてこの作品を観ていると、「これはリアルだな」と感じる場面がいくつもありました。そこで今回から、Netflix『ダウンタイム』をひとつのきっかけに、ドラマの中だけでは分からない「現実の美容医療」について、形成外科医の視点からお話ししていきたいと思います。
第1回のテーマは、
「同じ手術でも、医師によってダウンタイムは変わるのか?」
です。
同じ手術でも、腫れや内出血に差は出る?
結論からいうと、差は出ます。
ただし、ここで最初にお伝えしたいのは、ダウンタイムは医師の技術だけで決まるものではないということです。
患者さん自身の体のコンディションによる影響も非常に大きいからです。
たとえば、同じように転んでも、青あざができやすい人とできにくい人がいます。
小さな傷が比較的早く治る人もいれば、治るまでに時間がかかる人もいます。
美容医療の手術でも同じことがいえます。
糖尿病、喫煙、高血圧、貧血、むくみやすさなどの体質や基礎疾患に加え、睡眠不足、栄養状態、飲酒、術後の活動量など、さまざまな要因が回復に影響します。
つまり、同じ手術を受けたからといって、すべての患者さんが同じように腫れ、同じ日数で回復するわけではありません。
一方で、医師の技術によって変えられる部分もあります
患者さん自身の身体の状態が大きく関係する一方で、手術をする医師側によって変えられる部分もあります。
形成外科では、組織をできるだけ傷つけず、血流を温存しながら「愛護的」に操作することを非常に重視します。
「愛護的」という言葉は、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。
簡単にいうと、皮膚や血管、神経、筋肉、脂肪などの組織を必要以上に傷つけないよう、丁寧に扱うことです。
繊細な手術器具を使い、必要に応じて髪の毛より細い糸で縫合することもあります。
また、皮膚の下にどのような血管、神経、筋肉、脂肪があるのか。
解剖を正確に理解したうえで、必要な組織だけを適切に操作することも重要です。
組織へのダメージは、できるだけ少なく
手術による組織へのダメージが大きくなれば、炎症や腫脹が強くなり、回復に影響する可能性があります。
そのため、
- 組織を必要以上に傷つけない
- 血流をできるだけ温存する
- 術中に適切な止血を行う
- 手術時間を必要以上に長くしない
といったことも大切です。
形成外科医として手術をするときには、単に「目的の形にする」だけではなく、そのために周囲の組織へどのくらい負担をかけるのかまで考えながら手術をしています。
ただし、どれだけ丁寧に手術をしても、内出血や腫れを完全になくすことはできません。
患者さんの血管の状態や体質、手術内容、術後の過ごし方などによって、内出血や腫れが生じることはあります。
「腫れなかった=上手」「腫れた=下手」ではありません
SNSや口コミを見ていると、
「ほとんど腫れませんでした」
「翌日から普通に仕事ができました」
といった体験談を目にすることがあります。
患者さんにとって、ダウンタイムが短いことはもちろん大きなメリットです。
ただ、
「腫れなかったから上手」
「腫れたから下手」
と単純に判断することはできません。
そもそも手術の種類や範囲によって、必要なダウンタイムは異なります。
さらに先ほどお話ししたように、患者さん自身の体の状態によっても経過は変わります。
ダウンタイムの短さだけで医師を判断するのではなく、
どのような手術を行うのか。
どのようなリスクがあるのか。
術後に何か起きた場合、きちんと診てもらえるのか。
そうしたことまで含めて考えることが大切だと思います。
この「ダウンタイムが短い=上手な医師なのか?」については、次の記事でもう少し詳しくお話しします。
「誰に手術してもらうか」だけではない
美容医療を考えるとき、
「どんな手術を受けるか」
「誰に手術してもらうか」
には、多くの方がとても慎重になると思います。
もちろん、どちらも大切です。
ただ、もう一つ知っておいていただきたいのが、
「どんな体の状態で手術を受けるか」
という視点です。
手術をするのは医師ですが、その後、傷を治していくのは患者さん自身の体です。
だからこそ、ダウンタイムは、
「患者さんの体の状態」と「手術そのもの」の両方によって決まる
と考えるのが適切です。
UTOPIART CLINIC EBISUでも、目の前の施術だけを見るのではなく、その方の身体の状態や生活背景まで含めて考えることを大切にしています。
美容医療というと、どうしても「何をするか」に目が向きます。
でも、手術前の身体の状態を知り、できる範囲でコンディションを整えておくことも、術後の回復を考えるうえで大切な要素のひとつです。
松宮詩依
UTOPIART CLINIC EBISU 院長
形成外科