「ダウンタイムが短い=上手な医師」は本当?形成外科医が考える医師選び
Netflix『ダウンタイム』から考える、美容医療のリアル
「腫れがほとんど出なかった」
「翌日から仕事に行けた」
「ダウンタイムが短かった」
美容医療についてSNSや口コミを見ていると、こうした言葉を目にすることがあります。
これから美容医療を受けようと考えている方にとって、ダウンタイムがどのくらいあるのかは、とても気になることだと思います。
では、
「ダウンタイムが短い先生=手術が上手な先生」
と考えていいのでしょうか。
結論からいうと、必ずしもそうではありません。
ダウンタイムの長さだけで、医師の技術は判断できない
前回の記事でもお話ししたように、同じ手術であっても、腫れや内出血の程度には個人差があります。
そもそも、手術の種類や範囲によって必要なダウンタイムは異なります。
さらに、患者さんの体質や血管の状態、基礎疾患、睡眠、栄養状態、飲酒、喫煙、術後の活動量なども回復に関係します。
そのため、
「腫れなかったから上手」
「腫れたから下手」
と単純に判断することはできません。
もちろん医師側にも、組織をできるだけ傷つけずに扱うこと、血流を温存すること、適切に止血することなど、できることがあります。
しかし、どれだけ丁寧に手術をしても、必要な腫れや内出血が生じることはあります。
「ダウンタイム○日」という情報だけで決めないでほしい
美容医療を検討するとき、
「○日で仕事に復帰できます」
「腫れにくい施術です」
といった情報は、とても分かりやすいものです。
ただし、ここで気をつけていただきたいのは、ダウンタイムには個人差があるということです。
たとえば同じ「1週間」という期間でも、
少しむくんでいる程度なのか。
内出血が残っているのか。
メイクをすれば気にならない程度なのか。
人前に出る仕事ができる状態なのか。
患者さんによって「日常生活に戻れた」と感じる基準も違います。
だからこそ、「何日で治りますか?」だけではなく、
どのような経過が想定されるのか。
どの程度の腫れや内出血が起こり得るのか。
仕事や予定にはどの程度余裕を持った方がいいのか。
そこまで確認しておくことが大切です。
ダウンタイムを短くすることだけが、治療の目的ではありません
患者さんにとって、ダウンタイムは非常に大きな問題です。
事前に説明を受けていても、実際に自分の顔が腫れたり、内出血が出たりすると、不安になる方は少なくありません。
だからこそ医師としても、組織へのダメージをできるだけ抑えることは大切にしています。
ただ、「ダウンタイムを短くすること」だけを最優先にして治療を選ぶことが、その方にとって一番いいとは限りません。
治療にはそれぞれ、できることとできないことがあります。
希望する変化によっては手術が適していることもあれば、そこまで大きな治療をしなくても別の方法が考えられることもあります。
大切なのは、ダウンタイムだけを切り取って治療を決めるのではなく、何を変えたいのか、そのためにはどの治療が適切なのか、その治療にはどんな負担やリスクがあるのかを一緒に考えることです。
患者さんの「生活」まで考えて治療を選ぶ
同じ悩みを持っていても、患者さんによって生活はまったく違います。
- 仕事で毎日人前に出る方。
- 長期間お休みを取ることが難しい方。
- 大切な予定を控えている方。
- 多少ダウンタイムがあっても、しっかり変化を求めたい方。
- できるだけ周囲に気づかれずに治療を受けたい方。
そのため診察では、症状や希望する仕上がりだけでなく、仕事や予定、ライフスタイルまで含めて治療を考えることも大切です。
場合によっては、
「この手術をすれば希望する変化は期待できますが、今のスケジュールではダウンタイムが難しいかもしれません」
とお伝えすることもあります。
また、患者さんが求めていることによっては、ダウンタイムの少ない別の治療法をご提案することもあります。
治療を決めることがカウンセリングのゴールではありません。
その方にとって、今その治療をすることが本当に適切なのか。
そこまで一緒に考えることが大切だと思っています。
医師選びで見てほしいのは「短さ」だけではない
では、美容外科の医師を選ぶときには、何を見ればいいのでしょうか。
ダウンタイムという観点から考えるのであれば、単純に「短い」とうたっているかどうかではなく、
- 自分が受ける治療の経過を具体的に説明してくれるか
- 腫れや内出血などの可能性について説明があるか
- 自分の体の状態まで確認してくれるか
- 仕事や予定を踏まえて治療時期を考えてくれるか
- 希望に対して別の選択肢も提示してくれるか
- 術後に不安や問題があったとき、相談できる体制があるか
といったことも確認してほしいと思います。
「何日で腫れが引くか」という数字だけでは、医療のすべては分かりません。
「できるだけ早く元に戻りたい」も、大切な希望です
ここまで読むと、「ダウンタイムの短さを気にしてはいけないの?」と思われるかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
できるだけ早く仕事に戻りたい。
家族や職場に知られたくない。
大切な予定に間に合わせたい。
それもすべて、治療を考えるうえで大切な希望です。
だからこそ、カウンセリングでは遠慮せずに伝えていただきたいと思っています。
医師側も、
できること、できないこと。
必要なダウンタイム。
考えられるリスク。
ほかに選べる方法。
それらを誠実にお伝えする。
そのうえで、患者さんと一緒に治療を選んでいくことが大切だと考えています。
美容医療では、患者さんが医師を選ぶと同時に、医師と患者さんがお互いに信頼できる関係を築けるかどうかも、とても大切です。
「ダウンタイムが短い先生」を探すだけではなく、
自分の希望や生活まで含めて相談できる先生かどうか。
それも、医師を選ぶときの一つの基準にしていただけたらと思います。
監修・執筆
松宮 詩依
UTOPIART CLINIC EBISU 院長
形成外科医