脂肪のせいでむくんでいる?脂肪浮腫の病態とは

 

 

脂肪浮腫は未だ原因が不明の病気です。

主に若年女性(20代後半)に発症し、四肢(腕、太もも、ふくらはぎ)の皮下脂肪が病的に(異常に)、左右対称性に増加することが特徴です。

その代わり、胴体、手、足はほとんど変化が見られません。手関節や足関節におこる「ブレスレット様」の見た目が特徴です。

 

普通の太りすぎ(肥満)と何が違うの?

太りすぎ(肥満)の患者さんと異なり、脂肪浮腫の患者さんは脂肪組織が異常に増加したことにより、「痛み」「圧痛(押すと痛い)」「血管脆弱性」「関節炎」「皮下出血になりやすい」という症状が起こりやすいです。

皮下脂肪自体に原因があるのかどうか、調査された論文がありますので今回はそちらをご紹介いたします。

 

脂肪浮腫患者とやせ型患者の脂肪組織の比較検討

この論文では、脂肪浮腫(Stage1~2)の患者10名から、おしり(脂肪浮腫)、肩(非脂肪浮腫)の脂肪を採取し、肥満患者10名とやせ型患者12名の脂肪と比較検討しています。結果では、脂肪浮腫により影響を受けた皮下脂肪組織に共通する特徴として毛細血管に特異的な変化を認めました。(組織学的な特徴 下記)

  • 毛細血管壁の肥厚
  • 内皮細胞・周皮細胞の過形成
  • 基底膜の低密度化
  • 内皮細胞の変性
  • 変性細胞の管腔内に剥離・脱落する像

 

Endothelial cell alterations in capillaries of adipose tissue from patients affected by lipedema.andro Michelini et al.

Obesity (Silver Spring). 2025;33:695–708.

(DOI:10.1002/oby.24244)

結果として、脂肪浮腫の患者では毛細血管壁面積、内皮細胞核数、周皮細胞数はいずれも有意に高く、Ki-67陽性内皮細胞の割合が肥満患者、やせ型患者よりも増加していました。

さらに、組織の実質と間質成分にも複数の異常が認められ、脂肪浮腫の患者ではおしりの方が肩よりも有意に脂肪細胞に大量のカルシウム結晶が観察されました。コラーゲン線維の増生も同様です。

脂肪細胞自体は、脂肪浮腫患者の方がおしりも肩も両方ともやせ型患者と肥満患者より有意に大型でした。

 

細胞死、炎症の関連も調べるため、CD68陽性マクロファージも定量し、脂肪浮腫患者でおしりが肩より陽性が多く脂肪浮腫の患者では炎症がみられると考えられました。

 

 

脂肪浮腫は内皮細胞の侵襲になる

脂肪によるむくみがどうしてよくないのか、それはこの論文によると内皮細胞を増生するだけでなく、内皮変性や血管侵襲の兆候があったからです。

脂肪浮腫の状態は、血管の損傷、トラブルになるということが分かりました。

それだけでなく、Ki-67陽性内皮細胞や毛細血管壁で頻繁に細胞分裂し、内皮細胞と周皮細胞が増殖すると、これが新しく脂肪細胞を供給することが分かっています。

つまりどんどん脂肪浮腫は炎症を引き起こしながら進行するということです。

 

まとめ:内皮細胞の異常は脂肪細胞を病的に増大させ、カルシウム代謝異常を引き起こし、マクロファージの浸潤を引き起こすと考えられる。

 

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