リンパ浮腫と脂肪吸引
リンパ浮腫では、ステージに応じて様々な治療法、選択肢があるということはお伝えいたしました。
ライフスタイルに合わせて、少しずつ始めていき、セルフケアを継続することが大切でした。
一度進行したリンパ浮腫は、非可逆性で、正常には戻りません。ですので早めに対策をとっておくことが大切です。
受診を早めにしておくことが最も重要です。
ステージに合わせた治療のうち、脂肪吸引という方法をご紹介いたします。
適応は?
国際リンパ浮腫学会(ISL)の定めるステージでは、Ⅱ期後期~Ⅲ期の状態が適しています。
指で皮膚を押し、凹みの痕が残らなくなってしまった状態(非圧痕性浮腫)です。
皮下脂肪が蓄積し線維化も進行している状態が適しています。
脂肪吸引の方法は?
脂肪吸引は、リンパ浮腫のせいで皮下脂肪がたまってしまった部位に直接吸引管を刺し、圧をかけて脂肪を吸引していく操作になります。麻酔方法は局所麻酔と全身麻酔のどちらでも選択できます。全身麻酔ではありませんが、静脈麻酔という鎮静をかけて行う場合もあります。痛み止めや筋弛緩薬が入っていない(正確には全身麻酔とは鎮痛、筋弛緩薬を投与しない点で分けています)薬剤ですが、薬剤とその投与量によってはそのような作用も引き起こされ、全身麻酔のような気管内挿管は行いません。酸素の値が下がった場合には、補助的に酸素投与を行う場合がありますが、個人差があるためモニターでモニタリングしながら行います。
吸引前、Tumescent液(チュメセント液)という麻酔薬や止血剤を混注した薬剤を吸引する部位に注入してから行います。そのための皮膚切開はわずか数mmでよく、小さな皮切部から吸引管を挿入していきます。
物理的に脂肪を吸引してしまうというものです。
一部位、100cc~200cc吸引することが多いです。個人差があるのと部位によっても異なります。
脂肪吸引後、注意することは?
術後、注意することとしては、血液や体液が溜まってしまう場合があることです。
そのため、術後は安静にして頂き、術前から指導し日常的に行って頂いた圧迫療法を術後も引き続き行って頂きます。
この圧迫ができない場合、リンパ液の流れを改善する手術ではないため、浮腫が再燃することがあります。
また、皮下脂肪を吸引し皮膚が薄くなり血流不全となった場合、皮膚壊死したり陥凹が残ったりすることがあります。
頻度的に高確率でみられる合併症は、出血と感染です。
リンパ浮腫の状態が進行していると、線維化した皮下組織の中を吸引管が通るため、脂肪を吸引しにくかったり、血管を損傷する確率が上がったりします。
術後に体液や血液を吸引するための管(ドレーン)を挿入する場合もありますが、ほとんどしません。
それよりも圧迫の方が重要です。
費用は?
今のことろ、保険診療では脂肪吸引は行えません。すべて自費となります。
保険診療でリンパ管静脈吻合術(LVA)を行った場合は、同時に脂肪吸引もする場合は混合診療となるため、脂肪吸引のコストはとらない場合があります。
LVA自体は局所麻酔でできますが、脂肪吸引を同時に行うときは全身麻酔を選択することがあるため、日帰り手術ではなく入院をすすめる場合もあります。入院の方が安静を保てるということと、麻酔科が麻酔をかけて下さいますが、術翌日の麻酔科医の回診では麻酔による合併症がないかを確認されます。さらに鎮痛は得られているかも確認して頂けます。
二重に安心です。
コストだけでは治療は選べませんが、脂肪吸引はそれだけ行うことはなく、術前の圧迫療法が基本となっているものです。美容外科手術で行う手技ですが、その後のフォローがとても大切なので、きちんとした保険診療を行える施設で診て頂く方が総合的に安心と思われます。
どれくらいの効果があるのか?
世界的に有名な形成外科のジャーナルに掲載された症例写真を供覧致します。
右上肢のリンパ浮腫の方で、健側(左)よりも細くなったそうです。
術前A(上段)、術後3カ月B(下段)をお示しします。
掲載元 https://doi.org/10.1097/gox.0000000000002513
Wei F Chen, Wei-Feng Zeng, Patrick J Hawles, et al. Lymphedema Liposuction with Immediate Limb Contouring. Plast Reconstr Surg Glob Open.2019 Nov 12;7(11): e2513. doi: 10.1097/GOX.0000000000002513

効果的ですね。
脂肪吸引によりリンパ浮腫のせいであった動かしにくさや見た目の悪さを改善することにつながるようです。